バンドのヴォーカリストから俳優へ
1967年、グループサウンズ全盛期にザ・テンプターズのヴォーカリストとして世に出た萩原は、バンド解散後、やがて演技の世界に足を踏み入れる。
元々俳優ではなく監督志望だったため、助監督として就く予定だった映画『約束(1972)』で、たまたま主演俳優が降板したのが、ザ・テンプターズの萩原健一ではなく、俳優、萩原健一としてのデビューのキッカケだった。
この初主演作が高い評価を得て、TVドラマ『太陽にほえろ!』(1972~1986)のマカロニ刑事役に抜擢され、
代表作となった伝説のTVドラマ『傷だらけの天使』(1974~1975)出演へと導いていく。
そんな経緯から、作り手側🎬としての意識が高かった萩原は、ただ台本を読んで監督の指示通りに役を「演じる」ことを嫌う男だった。
自身が役そのものを「生きる」ために、即興を含め、より能動的に提案をし、その役が言いそうにないと思えばセリフも改変する。
画面に映るのは、『役でもあり萩原 健一そのものでもある!』というところまでシンクロ率を高めていく。
ミュージシャンらしい直感的スタイルだが、その結果、生まれる圧倒的なリアリティーは、観る者をくぎ付けにし、特に同世代の若者の熱狂的支持を獲得していった。
(若き日の松田優作が彼に心酔していたのも有名な話だ)。
『約束』
ふと乗り合わせた列車…
螢子(岸 恵子)と朗(萩原 健一)。
一度目の朗との約束もすれ違い…
だけど、螢子の何年もの間の孤独と飢えた心を確実に一瞬、満たしてくれた朗。
軽薄そうだけど、一緒に同行してくれた墓参り。
無意識に化粧品を買い込み、髪型を変える螢子。
凍った心が溶け出す姿が可愛らしい。
荒れた日本海、国鉄、駅弁、ショーケンのコンチネンタルなコート…昭和が漂って美しい!
観てる者はいつの間にか、ショーケンの一挙手一投足に目が離せなくなる…👀
その表情、所作、言動にグイグイ惹き込まれてゆくのだ。
エキセントリックで、破滅的な性格も逆に魅力になっている。
織田 信長役なんて、ドンピシャ!だろう、
しかしその反面、ショーケンの少年のような無邪気さ、人懐っこさは女にモテるだろうな…と男なら誰でもわかる。
全力!をカッコ悪い、ダサいとされていた時代。
たが、ショーケンはいつも全力だ!
直感で動くから迷いがないのだ!
ショーケンには、”カッコ悪い事のカッコ良さ”を教えてもらった。
おそらく、それこそがショーケンの魅力💙だろう。
この『約束』という映画は、まるでフランス映画を観てるようだ。
岸恵子の美しさや、ダークな画像、音楽…そしてエンディング…
まるでクロード・ルルーシュ監督の『男と女』を観ているようだった。
ショーケンの演技を初めて観た人は、唯一無二の彼の魅力に殺られてしまっただろう。
それも、主演の降板がなかったら、昭和の稀有で不世出の俳優『ショーケン』は生まれていなかっただろう。
令和の時代なってもショーケンを超える観ていてハラハラ・ドキドキさせてくれる俳優は出てきていない。
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